『隙間』vol.1を読んで

 制作スタッフ7人のうち私の知っている学生が3人も関わっているフリーペーパー『隙間』のvol.1が発行された.
 少し前から,彼らがそういった活動を始めているのだということは聞いていた.しかし,具体的な中身がどういうものなのかについては全く聞かされていなかった.4月5日,その学生の1人からブツを受け取った.その場では読まず,うちに持ち帰り,先ほど一通りそれなりに丁寧に読んだところである.
 野暮なので記事内容そのものについて評するのはよそう.
 扉を開けると「繋がり」の話で始まる.「おお,自分が専門にしているネットワークの話ではないか.」それがわかると(わかったつもりにすると),全体のコンセプトはわりと明快である.それを「隙間」と呼ぼうが何と呼ぼうが,それはお好きにどうぞ.
 しかし,である.いずれの記事からも,制作に関わった学生たちの切ないほどの無縁感が伝わってくる.社会は彼らが考えるほどに断片化されているだろうか.私には,やや誇張があるように感じられた.むしろ,社会が断片化しているのではなく,彼ら制作スタッフ自身が社会から切り離されていると(勝手に?)感じているように思われるのである.それは,大学生という年代の人々が,別に彼らでなくても,私もそのくらいの年代の頃に感じていたように,自分がまだ海のものとも山のものともつかぬ状態で自分探しをしている構図そのものであると思う.ウェブサイトにあがっている制作スタッフの編集後記の長文であることが,実に切ない.
 自分も学生時代こんなんだったっけ? 自分はもっと柳に風的にスマートに,逆に言えばあまり物事を考えずにやり過ごしたように思う.さらりと生きられない彼ら.彼らをそこまで追い立てる欲求とは何なのか.おもしろいのは,随所に前言否定があることである.「オレたちは大学でお勉強はしてきたけど,それだけでは満たされない残基がある」とでも言いたげだ.確かにそうかもしれない.少なくとも私の知っているその3人についていえば,インタビューの技法や文章のまとめ方といったことは習ってきたが,教員に頼らず最後まで自分たちだけで責任を持ってアウトプットをした経験はなかったのかもしれない.「自分たちの無能さに甘えたくない」というような強迫症めいたメッセージが伝わってくるのが痛々しいのである.
 「フリーペーパー」というのは,洒落かと思う.それは,彼らが大学という枠組みに縛られず,解き放たれたい(set me free)という欲求を暗示しているように思われた.しかし一方で,彼らはまだ自分が何と繋がればよいのか模索しているようにも見える.
 ワッツ流に,ランダムに繋がればよいと言い放つことは簡単だが,それでは,あまりに物理学的ジョークだと思うのかもしれない.人間は繋がりに意味を求めるから.
 学生にとって専門分野を決めることは悩みに悩んだ上での「必然」的意味を持っているのかもしれない.しかし,学生を受け入れる教員にとっては,ある年度にどんな1年生が入学してくるのか,また,その翌年,どんな2年生が自分の担当する分野に配属されてくるのかは,ほとんどランダムに決まっているように感じられる.しかし,そんなランダムな奴らでも,1年,2年とともに過ごせば,情もわく.私は,ランダムに出会った奴らとも一期一会の精神で接している.私には,それで十分である.彼らにとっては,ランダムな繋がりは意味があるのだろうか,ないのだろうか.
 なぜ,彼らは印刷媒体という形での出版を望んだのだろうか.どこでどのように読んでもらうことを期待したのだろうか.彼らは不特定な5千人(5千部)からランダムに(といっても松本市内だろうが)繋がられることについて,どのように考えているのだろうか.そのことにどのような意味があると思うのだろうか.
 それにしても,読んで肩が凝った.私など,そんなにあらゆるものに意味を求めなくてもよいと思うから気楽だけど,彼らはしんどいのだろうなと思う.しばらくはもがけばよいと思うが,最後は,あらゆる可能性の中から何か1つ(少数)を選び取らないといけない.少し離れた場所から応援はしていたいと思う.

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このブログ記事について

このページは、Ryuhei Tsujiが2010年4月 6日 01:00に書いたブログ記事です。

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