1.5.社会活動などの最近のブログ記事

 1月29日の午後に,今年度の「信州大学放送公開講座」の2回目として,ぼくが登場することになりました.今年度は,東日本大震災,長野県北部地震に伴う栄村付近の震災,6月の松本市南部を中心とした地震などがあり,長野県内もあちこちで災害に見舞われました.例年は多様な内容らしいこの講座でも,震災一色になったようです.今年のテーマは「地域と共に考え,学ぶ防災:知って備える防災への提言」となりました.ぼくも「災害時における地域ネットワークの重要性について」というタイトルで話をします.
 実はテレビを忌避していました.顔がいいので人気で過ぎたら困るなとかいうこともないわけではないのですが(笑),いろいろな人から,こちらが伝えようとしているようにはならず,編集の都合のいいところだけ切り取られてストーリー作られるよとか聞かされていたからです.政治家だって,話を断片的に引用されてスキャンダラスに放送されるといったことを常日頃見て知っているわけで,同じようにやられるとイヤだなと.
 しかし,今回は副学長直々に頼まれてしまったので,お引き受けせざるをえない状況に追い込まれてしまったわけです.なので,こちらも少し防衛策を講じました.こちらから積極的にはストーリーを語らないということです.結果的にかなりの程度はディレクターさんに話を作ってもらい,それに合わせた形になったかと思います.しかし,放送に先だって少し内容をいただきましたが,まあそれなりにできているのではないでしょうか.少なくとも,当初思っていたよりは編集はずっと穏当かなと思いました.ただ,何となくパンチがないようにも思いましたが.まあ,これは,ぼくのうだうだ話す悪いくせが祟ったのかもしれません.
 だけど,言っておくと,忌避していたとはいうものの,この30分の番組を撮るために,ほとんど丸二日くらいかかっています.一日は十日町に取材に行きましたし,もう一日は時間は短かったけれども大学で何時間か撮りました.ミーハーなぼくとしては,いつもテレビで見るアナウンサーの方を至近距離で見られて,ちょっとうれしかったということくらいは告白しておいてよいでしょう.別にぼくは心底から堅物ではありません(笑).
 というわけで,ローカル放送ではありますが,まあこのあたりで修行して,そのうち全国区でデビューします.顔がいいからもてるやろうな.(ウソ) でも,わざわざテレビに出て訴えなければならないことってそんなに多くありません.とりあえず,これが終わったら,色気づいてないで頑張って研究します.むしろそっちの方が本業です.頑張って,売れない本書こう(苦笑)

追記:
 しかし,思ったほど悪くなかったと思ったのは,ディレクターさんはじめ,すごくちゃんと働いておられたのを目にしたということと,実際,全体では数時間におよぶ取材を,うまく30分に収めるディレクターさんてやっぱり相当な能力をお持ちであるとわかったことです.
 もちろん,縮小の段階で,枝葉末節とかが切り落とされて,すきっとした感じになりすぎてしまうということはあるかと思います.だから,その部分が伝わらないとイヤだと思う研究者がいるのもわかります.今回は,とりあえずテレビ取材がどうなっているのかということが実体験としてわかったので,これからのことは,また考えようと思います.

 私は,中越地震被災地で復旧・復興の研究を行ってきた社会学者です.ここでは,社会学的な研究というよりも,取材の中から被災地の住民の方が陥りがちな問題を指摘して,少しでもお役に立ててもらおうという主旨で提言を行っています.

<被災地在住の方々へ>
住宅の修理について(3月21日1:04記)
 3月11日の大震災から1週間以上が経ちました.地震直後の着の身着のままの避難生活から,次第に今後のことを考える段階に入ります.

 現時点では,テレビが伝えているのは,主に,原発の事故と津波に襲われた地域の避難生活についてです.しかし,津波の被害を受けなかった内陸部では,おそらく中越地震のころと同様,住宅を修理するのか,建て直すのか,行政からの資金援助にはどのようなものがあるのか,などと考え始めているころだと思います.
 ここで知っておいてもらいたいことの1つは,被害の程度によって,後々さまざまな支援の程度が違ってくるということです.行政が発行する「罹災(りさい)証明書」が「全壊」なのか「半壊」なのか「一部損壊」なのかは,大きな違いをもたらす可能性があるのです.自分でいくら被害の大きさを主張しても,聞き入れられることはないと考えてください.

 この時期に重要なことは,行政から「全壊」「半壊」「一部損壊」などの判定に来る前には,なるべく修理を「しない」ということです.特に,全壊と半壊の間くらいになるのではないかと思われるが,ともかく修理すれば住めるような住宅にお住まいの場合,早く修理して早く元の生活に戻りたいとお考えになるのは,当然のことかと思います.農村部には,ふだんから土木工事を自分でやれるだけの技術を持っておられる方がけっこういるので,被害を受けた自分の住宅についても「できることは自分でやる」とばかりに,修理ができるところは,どんどん自分でやろうとする人がいるのです.
 しかし,行政から判定員が来る前に修理をしてしまうと,「住宅の被害はあまりない」と判定されてしまうことがあり,一段階ほど軽い判定になってしまうことがあるようです.はやる気持ちは少し抑えて,判定員が判定を終えるまでは,自らの手による修理はお待ちになった方がよいと思います.


応急仮設住宅への入居申し込みについて(4月4日18:33記)
 現在,被災地各地で着々と応急仮設住宅(以下,仮設住宅)が建設されているようです.
 しかし,みなさんご存知でしょうか.1.仮設住宅に入居するか,2.自宅の補修をするために被災者住宅応急修理制度(以下,応急修理制度)を利用するかは,どちらか一方です.両方というわけにいかないのでご注意ください.
 実際,中越地震の時でも,一旦仮設住宅に申し込んだものの,応急修理制度を使えないことがわかって取り下げたケースが多々ありました.市町村の役所・役場,あるいはウェブサイトなどでご確認ください.

 今回は,4月4日時点で河北新報が報ずるところによれば(http://www.kahoku.co.jp/news/2011/04/20110404t11025.htm),今回の地震災害について各市町村からの住宅応急修理制度の限度額は52万円とのことです.
 仮設住宅に入っても応急修理制度を使っても,被災者生活再建支援制度は利用することができます.
 同じ記事では,被災者生活再建支援制度は,住宅の被害程度や世帯人数に応じ,被災者に112万5000円~200万円が現金で支給されるとのことです.
 おそらく,東北地方一帯では,これと同じあるいはこれに準ずるのだと思われます.

 一方,新潟県では県単制度を実施しており,国と新潟県から,次の額が出ます(限度額).(http://www.pref.niigata.lg.jp/bosaikikaku/1301000503660.htmlより抜粋)

(図の全体が表示されない場合は,上図をクリックしてください.)

 このように,自治体によって対応は違います.
 インターネット時代になって,自分の市町村の情報も別の市町村の情報も得られますが,自分の市町村の情報を確認してください.

 実は,もっと重要なことは,今後どのようにして自宅と生活を再建していくかの道筋の判断を,「今」迫られているということです.まだ落ち着かない生活をされている方も多いと思いますが,焦らずに落ち着いて,しかし仮設住宅の応募締切をにらみつつ,今後のことについて考えてみてください

 私は,新潟県中越地震について震災復旧・復興を社会学的に研究してきました.被災地においてインタビューなどを行ってきた内容から提言などをしています.ここでは,地震発生後数日経過した頃から生じる問題について,包括的ではありませんが,重要な点について五月雨式に記していきます.非常に気の重い話もありますが,お許しください.

<被災地在住の方々へ>
盗難について(3月19日17:33記)
 地震発生から数日経つころから,盗難が起こり始めます.私の中越地震の時のインタビューでも言及されたことがありますし,災害研究では一般に知られていることなのですが,略奪や放火といった問題が起こってくるのです(高梨,2007).

 例えば,避難所において,知らぬ間にそれまであったはずのものがなくなっている.そして,それが一回だけではなく何度も起こるのです.日中は高齢者など以外は外に出ていきます.その隙を狙って盗難に入る人が多いようです.
 避難所にそんなに簡単に見ず知らずの人が出入りできるのかというと,意外に簡単です.救援物資を持ってくる人や行政の人など,ふつうに出入りします.それに紛れて盗難目的の人が入ってくることは難しいことではありません.そういった人が,目についたものをさっと持っていくということは十分にありうるわけです.
 もっと手が込んでくると,「ここの避難所の○○さんから,××を持ってくるようにと頼まれた」というようなことを言って,○○さんの居場所を教えてもらい,堂々と物色するという輩もあるそうです.

 こういった問題について,どう解決すればよいでしょうか.まず,避難所では,次第に自分の場所(居場所)が定位置として決まってきます.そして,夜はそこに布団を敷き,昼間は布団をたたんで積んでおくというような生活になります.これを利用します.積まれた布団の中で取り出しにくい位置,すなわち,下の方に大事な物は挟んでおくとか,積まれた布団全体を大きなシーツなどで全体を覆っておくようにするのです.物色する側からすれば,さっと目につくものくらいしか盗りにくいからです.いずれにせよ,「よいものを目に付くような場所に置かない」ように工夫してみてください.
 また,「ここの避難所の○○さんから,××を持ってくるようにと頼まれた」という形の依頼については,身分証の提示を求めて,しっかりと控えるといったやり方が有効ではないでしょうか.

「あれがない,これがない」とあまり言わないで(3月20日14:33記)
 地震から1週間が経ち,不便で苦しいながらも,避難所の生活に慣れてくる時期でもあります.この時期になると,「食べるものがいつも同じだ.もうちょっと違うものが食べたい」など,「あれがない,これがない」と思うようになってきます.
 ひとまず命だけは助かってよかったと思える段階は過ぎ,最小限度ではあるが食料もあることがわかってきた....しかしその一方で,「もとの生活水準を思えばまだまだだ.いずれ,もとの生活水準まで戻りたい」という気持ちも出てくる.それがこの時期でもあります.
 現実はどうかというと,現実にはまだ避難所(特に,県外などに避難していない場合)には十分な物資もないという状態です.
 この時期は,まだ「最低限度の食料があるだけよかった」と考える段階にある人と,「早くもとの生活水準まで戻りたい」と考える段階にある人とが混在しています.後者は,「あれがない,これがない」と,つい言葉に発してしまいがちです.しかし,これは,「最低限度の食料があるだけよかった」と考えている人には,何と強欲な人だと映ってしまい,イライラさせてしまうことがあります.それで口論になってしまうこともあるようです.まだ,いろいろなものが足りないことは分かっている.それは誰にでも分かる.でも,今はこれしかない.ですから,どうしても「あれがない,これがない」と言いたい場合は,人のいないところにでも行って叫んでください.でも,人のいるところではなるべく「ない,ない」と言わないようにしてください.
 中越地震のときのインタビューでも「人の本性を見た」というような発言が何度も聞かれました.そのうちの初期の頃のものが,この時期のものです.
 これから先,復旧・復興には長い道のりがあります.農村・漁村では,特に協力関係が重要です.ここで相互不信の状態になることは好ましくありません.

<電力会社(特に東京電力)の方々へ>(3/16記,3/18追記と修正)
 (計画停電開始3日目における提言)
 計画停電が始まって3日経ちました.改めてここまでの問題点を振り返り,今後どうすべきかについて提言したいと思います.

計画停電にともなう問題のうち,私が特に指摘したいのは,次の4点です.

1.交通,とくに鉄道について,首都圏の線路を始め施設はほとんど復旧しているのだと思います.しかしながら,計画停電のため,変電所への送電がその時間帯に止まるため,本数の減少や運休などが続いています.

2.計画停電はブロックごとに行われていますが,ブロックごとに毎日停電の時間が違ううえ,停電の時間帯もかなり間際になってから決定されています.これでは,鉄道はもとより誰もが計画的に行動することができません.

3.これら1と2が連鎖的に招くのは,都市機能全体の大きな低下です.

4.原発事故にともなって電力の総量が減っているのは分かりますが,これによって首都圏の都市機能が低下することは,輸送力の低下をはじめとして,日本経済への大きな打撃となります.これでは,大震災の被災地の復旧・復興は遅れ,より深刻な事態を引き起こします.

では,どうすればよいのでしょうか.
電力の総量が低下していることは分かりますので,全てが以前のとおりとはいかないことも分かります.しかし,低下の程度をなるべく小さく抑えるためにはどうすればよいかです.

1.交通,特に鉄道を計画停電の対象から外すこと.少しずつ緩和が進んでいるようでもありますが,まだまだです.

2.毎日毎日ブロックごとに停電の時間帯を変えるのではなく,一定期間(たとえば1週間)同じ時間帯とすること.そうすることで,その1週間は計画的に行動することができます.そして,次の1週間についての停電の時間帯を1週間前に告知すること.これによって,次の1週間についても備えることができます.

3.可能であれば,私は計画停電よりも総量規制の方がよいのではないかと思います.これは,経済同友会の桜井氏も同じ見解を示しています.それは,特定の時間帯に電気が一切使えなくなるよりは,供給量を全体的に減らしていく方が,さまざまな点で効率がよいと思われるからです.

3-1.計画停電の最初の3日間,人々の電力消費への意識が高まり,省エネ行動を取ることが実際に可能であることが分かってきました.ちょっとした心がけを継続的に続けていくことはできるということです.
 計画停電は,ある意味では,ちょっとした心がけをしているのに,罰を与えられるようなもので,不愉快です.総量規制の方が,ちょっとした心がけをすることに意味があるのだということを人々は納得しやすいはずです.

3-2.日々(あるいは一定期間ごとに)鉄道の時間帯が変化するよりは,生活者としては生活しやすいですし,鉄道会社も一日の本数を全体的に減らす(ダイヤの見直し)などする中で,より安定的・計画的な運行ができるでしょう.ただし,本数の削減は,朝晩のラッシュなどをよりシビアなものにするでしょう.これまででも首都圏近郊の朝晩のラッシュは相当にひどいので,乗客が怪我をしたりする可能性は高くなるでしょう.
 したがって,もちろんここでも,鉄道に対する総量規制は,ない方が列車の本数も原状並みの本数に保てるのでよいでしょう.

以下,3/18追記
「総量規制」に対しては,問題点も指摘されています.

 総量規制になると,「誰かが節電してくれさえいれば,自分は使ってよい」と考える人が出てくるので,結果的に総量規制はうまくいかない,というものです.

 しかしながら,今回の場合は,「脅し」が使える状態であると考えられます.「もし,総量規制がうまくいかなかったら,計画停電にもどすぞ」という脅しです.計画停電の不便さを味わっていますから,「あの状態に戻るよりは,自ら少しずつでも節電する方がマシだ」と考えて,継続的に節電をしてもらえると考えられます.そして実際に,節電量が減ってきたら(従来どおりの電力消費量に戻ってきたら),計画停電を再度実行するという方法を取ることができます.したがって,電力の総量規制は,なお有効であると考えられます.

以下,3/18修正箇所のまとめ
 拠点病院にかかわる記述があったものを削除しました.
 3/14に記した記述全体を削除しました.

 3月11日に起こった未曾有の大震災のあと,非被災地では若干落ち着きを取り戻してきたかのように感じられます.しかし一方で,非被災地に特有の,よく考えてみると非常におかしな行動が現れてきています.おかしな行動というのは,単に笑い話くらいならよいのですが,有害なものもありますので,そういった行動を少しでも抑えたいと考え,提言としてまとめました.

【提言1】食料品の買い占めは控えましょう.
(提言1の理由など)
 例えば米について考えてみましょう.昨年度の米の収穫高は平年並みでした.例年,平年並みに収穫できれば,米不足でパニックになることなんてありませんよね.
 被災地で米不足となるのは,そのときに米を買う必要がある人の分しか仕入れをしていないからです.また,震災で補給路を断たれると,今ある分しか供給できなくなるので米不足となってしまうのです.
 しかし,非被災地で米不足となることはあるのでしょうか.昨年,平年並みに収穫できているのですから問題ありません.非被災地のお店から米が消えてしまうのは,米不足だと早とちりした人が買い占めようとしたからというだけなのです.
 ふだんの流通量は一定ですから,急に買い占めをすることは想定されていません.ですので,そういう行為は,他の人や流通業の人に迷惑をかけることになるだけです.
 今買い占めて,数ヶ月後に数ヶ月前のお米を食べるよりは,数ヶ月後にそのとき精米したお米を買って食べる方がずっとおいしいですよ.
 他の食料品についても同じようなものです.輸入されているものも含め,多少の増減はあるにせよ,ほぼ例年並みに推移しています.心配する必要はありません.
 中にはトイレットペーパーを買い占める人もいるらしいですね(笑).オイルショックか何かと勘違いしているんでしょうか.全く論理のかけらもありませんね.


【提言2】ガソリンを買いだめするのは控えましょう.
(提言2の理由など)
 これも備蓄はまだ十分にあるとのことですから,上の米の例と同じです.
 それよりも,ライド・シェアリングについて考えてみませんか.ライド・シェアリングとは,乗り合いという意味です.あなたが買い物など日常的に行く場所は,近所の人や同じマンションに住む人も,日常的に行く場所です.そうであれば,近所の人同士が車に乗り合いをすることによって,ガソリンの消費量を減らせますから,ガソリンを入れる回数も少なくてすみます.
 都会住まいの人は,ライド・シェアリングができるような親しい近所の人がいないということは事実でしょう.そこで,自治会・町内会やマンションの管理組合が音頭を取って,ライド・シェアリングを呼びかけてみてはどうでしょうか.男性は,毎日通勤で,うちには寝に帰るだけというような人も多いでしょう.しかし,女性の方は,子ども同士の関係から生じる女性同士の関係があることが多いので,むしろ,女性がママ友同士でライド・シェアリングの仕組みを作ってみられてはいかがでしょうか.2人でライド・シェアリングすれば,ガソリンの消費量は(やや単純化していますが)1/2,3人ならば1/3ですよ.これをみんなでやったら,「エコ」という観点からもすごく効果がありますよ.
 ご近所でライド・シェアリングの仕組みを作ることは,近所の人同士の関係を作り出す効果も期待できます.もし今後,震災などが発生した場合に,近所に知り合いのいない状態よりも,いる状態の方が,復旧・復興において役立つことは言うまでもありません.


 ところで,こんなふうに言っても,それは分かるけれども,でも,自分1人くらいは買い占めても大丈夫だよね,と思った人はいませんか.
 確かにもしそういうふうに考える人があなた1人だったら,まあそれほど影響はないかもしれません.
 しかし,そういうことを実は多くの人が考えたとしたらどうでしょうか.そう,それではやっぱりあちこちで物不足になってしまうでしょう.(これを,専門的には「社会的ジレンマ」といいます.)
 そういうことを考えてしまう人ややってしまう人は,厳しい言い方をすれば「エゴイスト」だということです.「あなたはエゴイストだ」と言われて気持ちよい人はいないと思いますが,実際のその人の考えや行動は,そういうものだと思いませんか.

 あなたが買い占めて,括弧付きですが「豊かな」生活をおくる一方で,被災地の人たちが,少ない食糧や少ないガソリンを分け合って非常にひもじい思いをしていることについてどう思いますか.そんな生き方は「豊かな」生き方なのでしょうか.
 通常時であれば,たくさん物があって,たくさん消費することで豊かさが感じられるかもしれません.私もそのような生き方を否定するものではありません.しかし,今は非常時なのです.みんなで協力しあって,冷静に考えて,お互いに迷惑を掛け合うような行動をやめようではありませんか.

 被災地に安否確認して,自分の親や親戚が無事だったらそれでおしまいでしょうか.被災地で続いている苦しい生活を思い,あなただけがのうのうと物欲のままに振る舞って暮らすことがいかに恥ずかしいことか,考えてみてほしいと思います.

 私は,新潟県中越地震について震災復旧・復興を社会学的に研究してきました.3月11日,東北地方から関東地方にかけて,また,長野県・新潟県においても未曾有の震災が発生しました.今こそ,私がインタビューなどで聞いたことや,調査票調査(いわゆるアンケート調査)の統計分析でわかった科学的知見などをふまえて,何か提言すべきではないかと考えました.もちろん,科学的知見そのものだけではなく,そこから類推して書くこともあるし,どのような正義論を採用すべきかといったことを考えながら書くこともあると思います.それをふまえてお読みください.中には,被災地の方々に対して,かなり厳しいことを言うこともあるかもしれません.また,ツイッターでは,簡潔に書くことを旨としていますが,ここでは,やや詳しく書こうと思います.(記事開始:3/13 23:23,最終更新:3/16 14:57
 
<被災地在住の方々へ>
 (地震発生時点における提言)
1.いま大切なことは,「必要」と「平等」です.救援物資が届き始めると,自分や家族に少しでも多くの救援物資が欲しいと思われるでしょう.しかし,まずはそれを最も必要としている人に,そして次に,少なくとも平等に分配するようにしてください.

2.自分の欲求を出し過ぎたり,集落内の関係を悪くしたりするような言葉と行動は極力つつしんでください.いま集落内の関係を悪くしてしまうと,復旧・復興段階で集落内の協力関係がうまくいかなくなります.農村・漁村では,集落内の協力関係なしに復興はありえません.

3.区長さんやリーダーを中心にまとまった行動をしてください.区長さんが不在の場合は,至急,副区長の方を区長として昇格させるなど,中心となる人を決め,その人のもとに行動をしてください.

(提言の理由など)
1.この世の中には,誰もが絶対に正しいと認めるような分配の仕方はありません.しかし,こと,震災直後ということに限定して考えれば,「必要原理」と「平等原理」に基づいて考えていく必要があるのではないかと思います.物資等は少なく限度があり,避難所や地域住民にとって十分なものではないでしょう.だからこそ,それを腕っ節の強さでもって強奪するようなやり方はよくありません.おなかがすいているのは,特定の個人だけではなくそこにいる人全員です.平等に分けるということが必要かと思います.しかしながら,特定の物資については,特にそれを必要としている人がいるかもしれません.その場合には,その人にその物資を特にその人に優先的に分けてあげてほしいのです.

2.地震発生後,しばらくするとストレスがたまってきて,ついつい感情的な言葉を発してしまったりするものです.しかし,人に対して面と向かってきつい言葉を発すると,それはその人との関係を悪くしてしまうかもしれません.ふだんは許容の範囲であっても,緊急時には許容の範囲を越えてしまうこともありえます.また,自分や自分の家族のために,少ない物資に対して過度な要求をしたりすると,それは物資の奪い合いのような状態になってしまいます.それでは,それまで培われてきた村のまとまり(協力)が崩壊してしまうことにもなりかねません.農村や漁村では,人々がまとまっていることが重要です.そのようなまとまりをなくしてしまうと,その後,村を復旧・復興させていくことが難しくなります.
 実際,中越地震でも,「人間関係が悪くなった」という人々がかなりたくさんあったことを隠さず述べておきましょう.マスコミは「良き日本人像」を放送しようとしますが,それはマスコミが隠しているか取材がいい加減かのどちらかです.あちこちでトラブルは起きていました.事実,調査票調査(アンケート調査)をやっても,地震を経て集落のまとまりが以前よりも良くなったと感じている人は多くありません.トラブルが起こるのがむしろ普通のようです.しかし,トラブルは最小限度にしてもらいたいと思います.非常時おけるトラブルは,感情が高ぶっているときにはマイナスの結果しか生みません.お互いに注意しあって,過度な欲求や不愉快な言動は避けてください.

3.住民を束ねていくために,また,情報を集約して行政に伝えたりするために,区長の役割は重要です.平常時以上に重要になります.仕事量は圧倒的に増えます.体力的にも精神的にもたいへんだと思いますが,区長さんにはがんばってもらいたいと思います.住民間の関係を良好に保つためにも,区長さんのリーダーとしての活躍が必要です.区長さんが病弱だったりする場合には,この際,若手の方で人望のある方を区長にするのもよいかもしれません.それほど非常時の区長の役割は重要です.また,区長さんが行方不明になってしまっていたりする場合には,副区長の方を区長に昇格させるなどして,区長を立ててください.副区長というのと区長というのでは,住民の統括に差が出てくるようです.


<避難所で救援に当たっている方々へ>
 (地震発生時点における提言)
1.避難所の名簿はできていますか.最も必要な人は誰かを知るために,公平に物資を分配するために,名簿は作りましょう.もらう,もらえない,もらいすぎる,というのは,避難所の雰囲気を大きく左右します.

2.避難所に避難所以外からも物資をもらいに来る人がいます.何回目の分配でどの人に渡したかを把握するようにしましょう.これも公平性のためです.

3.トイレが確保できないところでは,女性が安心して用を足せる場所を確保してください.また,その場所へ行くときには,女性複数人で行くようにしましょう.

(提言の理由)
1&2.マスコミが隠しているか取材がいい加減かのどちらかですが,避難所ではトラブルがあったり,不満が渦巻いているものです.私が上の1,2を提言するのは,実際に一部に公平分配のルールを犯すような人がいるからです.たとえば,物資を受け取るのに,何度も列に並ぶ人や,夜陰に紛れて他人のものを盗むような人です.あまり過敏になりすぎるのも関係をぎくしゃくさせますが,避難所で救援に当たる人たちができることとしては,名簿を作り,誰に何を分けたかを記録することです.また,避難所に物資が届けられることから,避難所には生活していないが物資だけもらいに来る人もいます.避難所内の名簿を作ることは比較的簡単ですが,外部の人を記録するのはたいへんです.区長さんから名簿を提供してもらうなどすれば,外部の人の名簿を作ることも可能なことだと思います.
 これは手間なことですが,「あの人はたくさんもらっている」とか「知らないうちにものがなくなっている」といったことは,避難所や集落の雰囲気を悪くします.残念ながら,少数ではあれ,そういう人たちは一定の割合でいるものだと考えておいた方がよいでしょう.そのような意味でも,名簿を作成することをお薦めしたいと思います.

3.男性は立ちションもありえますが,女性にはそれは酷でしょう.また,夜などは灯りのない中では複数人で連れ立って仮設のトイレに行くようにしましょう.


<地方自治体首長の方々へ>

 (地震発生時点における提言)
1.「うちの被害は大きくない」と安易に言わないでください.それは,単に注目されなくなるばかりか,その後の国などからの支援の大きさに関わってきます.

2.特定の地域は,前回の選挙であなたへの投票が少なかったかもしれません.しかし,それでその地域を軽視するようなことをしてはなりません.

(提言の理由など)
1.中越地震の時に山古志村がマスコミに大きく取り上げられた一方で,とある市については,あまり取り上げられませんでした.これは,当時のその市の市長が,ざっと支持基盤に近い集落のみを見て回り「うちは大丈夫」と言ったために,山古志村には多くの物資が行った一方で,その市では物資の量が不足してしまったということもあります.また,当初は,国からの人的・資金的支援も少なくなってしまって,未だにそのことに恨みを持つ住民もいます.市町村長は「くまなく」自分の市町村を見て回ってから被害状況の判断をするようにしてください.

2.実は上の1であげたことのそもそもの理由は,当時の市長が,どうも直前の市長選で,他の候補を推していた集落のことをきちんと視察して回らなかったことにあったようです.市町村長になった以上,支持基盤の住民と同様,必ずしも支持基盤ではなかった住民も平等に接するべきです.好きとか嫌いとかいう問題ではありません.


<在米留学生の方々へ>
 (地震発生時点における提言)
1.アメリカ在住の留学生の方で「このままでは資金繰りが危ない」と感じられる方へ.まずは,大学内の身近なオフィスに問い合わせを.阪神大震災で実家が被災 した時,私の留学先の大学院オフィスは3~4クオーター分の授業料減免などをしてくれましたよ.ともかく早めにご相談を.

2.アメリカ在住の大学院留学生の方で「このままでは資金繰りが危ない」と感じられる方へ.焦って早く学位が取れる道を探りたくなる気持ちは分かりますが,一方で「学問に王道はなし」です.私はそれで失敗しました.気分は滅入るけれども,しっかりと歩んでください.応援しています.

安曇野市の「市民講座(信州大学講座)」(三郷公民館)で,1月21日(水)に「中越地震からの復旧・復興におけるネットワークの効果」と題して話をしました.

まず,若干私の中越地震に関わる研究の経緯を話したあと,最近発表した論文の成果について紹介しました.そして,その結果をどう活かしていくかというお話をしました.
安曇野市のみなさんにとって少しでもお役に立てる話ができたのなら幸いですし,また,それが,調査に協力していただいた被災地の方々のご恩に報いることだと思っています.

話の内容は,少し難しいところもありました.数字がたくさん入った表を載せたりしていたので,取っつきにくかったという方もいらっしゃったのではないかと思います.社会学は調査の結果をいかに読み解いていくかが腕の見せ所です.中越地震の話としても,また,研究の話としても,味わっていただけたらよかったのではないかと思います.数字の部分をあえて省かずに出させていただきました.

皆様の率直なご感想などをお寄せいただければ幸いです.また,どこかでお目にかかりたいと思います.

---
ここからは事後談ですが,安曇野市の広報誌に,話の要約を載せていただいたようです.
広報:3月18日号
かなり正確に載せていただいています.
お礼申し上げます.
(追記:5月9日)

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